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新たな事業を生み出す人たちが語った、「始めかた」や「広げかた」の大事な極意って?【ミラツクフォーラム2018】

フォーラム

ミラツクと親交の深いオピニオンリーダーや企業関係者が集結し、知見やアイデアを伸び伸びと交わす、年の瀬の恒例イベント「ミラツク年次フォーラム」。2018年12月23日に「東京ミッドタウン日比谷」で開催しました。第2会場でのセッション3では、「新たな事業を生み出す人の輝き」をテーマについて語り合いました。

(撮影:廣川慶明)

登壇者プロフィール
麻生要一さん
株式会社アルファドライブ 代表取締役社長/株式会社ゲノムクリニック 代表取締役・共同経営責任者
東京大学経済学部卒業。「リクルート(現・リクルートホールディングス)」に入社後、ファウンダー兼社長としてIT事業子会社「株式会社ニジボックス」を立ち上げる。その後、ヘッドクオーターにおけるインキュベーション部門統括として、社内事業開発プログラム「Recruit Ventures」およびスタートアップ企業支援プログラム「TECH LAB PAAK」の立ち上げに従事。2018年より起業家に転身し、企業内インキュベーションプラットフォームを手がける「株式会社アルファドライブ」、医療レベルのゲノム・DNA解析の提供を行う「株式会社ゲノムクリニック」を創業。そのほか、複数の企業の役員なども兼務。
石田真康さん
A.T.カーニー株式会社 プリンシパル/一般社団法人SPACETIDE 代表理事
2003年、東京大学工学部卒。グローバルコンサルティングファーム「A.T. Kearney」にて宇宙業界、自動車業界、機械業界を中心に15年超の経営コンサルティングを経験。「一般社団法人SPACETIDE」の共同創業者兼代表理事として、新たな民間宇宙ビジネス振興を目的に年次カンファレンス「SPACETIDE」を主催。「内閣府」宇宙政策委員会 宇宙民生利用部会委員。「科学技術振興機構 ImPACT(革新的研究開発推進プログラム)」アドバイザー。『ITmediaビジネスオンライン』にて「宇宙ビジネスの新潮流」を2014年より連載中。また著書に『宇宙ビジネス入門 Newspace革命の全貌』(日経BP社)がある。
川路武さん
三井不動産株式会社 経営企画部 ビジネスイノベーション推進部 統括
1998年、「三井不動産」入社。官・民・学が協業する街づくりプロジェクト「柏の葉スマートシティ」など、大規模案件におけるコミュニティづくりや環境マネジメント案件の企画開発に多数携わる。新規事業「WORKSTYLING」の立ち上げ・運営業務を経て不動産テック開発へ。「三井不動産レジデンシャル」出向時 (マンション事業の新商品開発等を担当)に、朝活「アサゲ・ニホンバシ」を開催する「NPO法人日本橋フレンド」を立ち上げる。
櫻本真理さん
株式会社cotree 代表取締役
京都大学教育学部卒。「モルガン・スタンレー証券」「ゴールドマン・サックス証券」にて勤務。証券アナリストとして2009年日経アナリストランキングその他素材部門20位、2010年同10位にランクイン。同社退社後、複数のスタートアップやプロジェクトに携わり、2014年5月に「株式会社cotree」を設立。主としてオンラインカウンセリングや起業家・個人向けコーチングのプラットフォームサービスを提供。「やさしさでつながる社会をつくる」を企業理念に、「よりよく生きたい」という思いを持った人が、孤立することなく、専門的援助を含む心理的サポートを得ることができるサービスづくりと普及を目指している。産業カウンセラー・コーチ。
柏谷泰行さん(モデレーター)
New株式会社 代表取締役社長
2008年大学卒業後、サイバーエージェントグループの「シーエー・モバイル」に入社。営業、企画、エンジニア、新規事業マネージャーを経て独立。2011年に「株式会社イグニス」に参画し、取締役プロデューサーとして30以上のプロダクトを開発し、累計3000万ダウンロードを達成。億単位の営業利益をあげる新規事業を2つ成功させ、2014年に東証マザーズに上場。2016年に「株式会社Mellow」を設立し、関東を中心に150店舗を展開する日本最大のモビリティサービスプラットフォームを生み出す。2018年に「New株式会社」を設立し、さまざまな大企業と組んで新規事業を開発している。

コミュニティは、うまくいけば加速度的に輪が広がる

柏谷さんはじめに、自己紹介を川ちゃんからお願いします。

川路さんこんにちは。僕はライフワークとして「NPO法人日本橋フレンド」の代表をしています。で、ライスワークと僕は呼んでいるんですけど、会社では「三井不動産」の経営企画部のビジネスイノベーションソリューションというところにいます。

川路さん鹿児島県生まれの3児の父でございまして、今44歳です。大学時代はアメフトしかしていなかったのですが、何の因果か「三井不動産」に入りまして、古い方はご存知だと思いますけど、当時「三井不動産」が建設した屋内人工スキー場「ららぽーとスキードームSSAWS(ザウス)」があって、そういうことをやる会社だと思って入ったんですね。

今でこそミッドタウンとかありますけど、当時はそんなかっこいいビルは一つもなくて、マンションなど学生は知りませんから。面接を受けまして、人事の方とウマが合ったということで入社し、今に至っています。

主に会社では、筑波と秋葉原の間にある「柏の葉キャンパスシティ」というまちづくりの構想や住宅の商品企画など、いろいろなことをしていたのですが、直近では「WORK STYLING(ワークスタイリング)」という事業を立ち上げからずっと担当していました。

サラリーマンが日中外出するときに外で働けるシェアオフィスを33カ所つくったんです。どこでもチェックインできて、使った分だけを請求し、会社払いするという仕組みになっています。そんな事業の言い出しっぺと企画と運営と営業、そんなことをこの2年半くらいで、もちろん僕一人でやったわけではないのですが、なんとか仕上げてきました。それで、すごく楽しくなってきたなと思ったら、おもちゃを取り上げられる感じで「はい!異動!」と。

一同 (笑)

川路さん本当にこれでいいのかなと、1カ月くらい悩みましたね。担当が変わってしまうと、信じてついてきてくれた人たちがポカンとして「えー!いなくなるの?」「お前に言われてこの仕事受けたのに」ということが多発する。2018年10月から今の部署にいて、仕事内容は話すと長いのですが、簡単に言うと「もう一つなんかやれ」という話です(笑)

もう一つの肩書きの「NPO法人日本橋フレンド」では、日本橋という場所で月1回朝食会をやっています。日本橋というまちには、創業から100年以上経つ企業が200社以上あるんです。そんな企業や店の旦那さんがいらして、経営など大変だったお話をみんなで聞きながら、そのお店や登壇者にちなんだ朝ごはんを食べる会です。

日本橋で働いている人や、古くからある店主などとテーブルでご飯を食べながら仲良くなるスタイルです。そんな会を6年半くらい前、会社とは別に立ち上げて、30人くらいの有志でこれまで76回(当時)開催しています。

最初は、ネットワークの効果やコミュティの力みたいなものを、会社の人は信じてくれませんでしたし、僕自身も大丈夫かな? と思っていたんですが、最近、急にこの会が脚光を浴びる感じになってきました。ネットの記事ではよく、「コミュニティの運営は難しく、続けるのが大変」と書かれますが、コミュニティは、うまくいけば加速度的に輪が広がっていきます。そのような知見がたまってきたかなと思っています。

 

今宇宙ビジネスはすごい勢いで盛り上がっている

柏谷さんありがとうございます。では、石田さんお願いします。

石田さん石田です。僕は宇宙ビジネスという市場を立ち上げて大きくしようと思い、いろいろな活動をしています。2015年から「SPACETIDE(スペースタイド)」という新しい宇宙ビジネスだけに特化したビジネスカンファレンスを仲間とともに立ち上げてきました。

石田さん「ZOZO」の前澤友作さんが「スペースX」と契約して宇宙旅行をするニュースは、みなさん知っていますよね。堀江貴文さんがロケットをつくっているのも有名だと思いますが、今宇宙ビジネスはすごい勢いで盛り上がっています。ロケット、衛星、宇宙旅行、月に行く計画など、いろいろな取り組みがあります。

僕が2015年に「SPACETIDE」を立ち上げたときは、バラバラだったんです。宇宙ビジネスに関わるベンチャー企業はお互いをなんとなく知ってはいるものの、個々の活動が点になっていたので、メディアのからのアテンションも集まらない。当時は日経新聞、いわゆる全国4誌を見てもどこにも宇宙ビジネスが載っていなかったんです。

ニュースになるのは、「はやぶさ」とか「JAXA(宇宙航空研究開発機構)」など科学としての宇宙でした。僕は宇宙ビジネスのメンバーをたくさん知っていて、「アメリカでは宇宙ビジネスがすごく盛り上がっているのに、なぜこの熱気が日本にないんだろう。いろいろな活動が結集するようなものをつくったらいいのではないか」と思い、始めたのが「SPACETIDE」というカンファンレンスです。

始めたらすごく人が集まりまして、毎年500~600人が来てくれます。また、最近「SPACETIDE COMPASS(スペースタイドコンパス)」という、その名の通り羅針盤のようなイメージのある業界レポートを書き始めています。

以前は宇宙産業に携わっていたのは、政府、大手企業、関連メーカーと「宇宙村」という言葉を聞くくらい限られた方々だったんです。例えば、こういうところで会っても名刺交換がないんです。もうみんな知っているから。

そんな状態がずっと続いていたのですが、ここ10年くらいで、イーロン・マスクさん(「スペースX」共同設立者およびCEO)やジェフ・ベゾスさん(「ブルーオリジン」共同創業者)など、いろいろなお金持ちの方々が入ってきて、急激に産業に関わる人が増えたんです。個人もいるし、起業家もいるし、投資家もいるし、大手企業の人もいる。こうした方々が一カ所に集まると、すごいことができるのではないかというのが「SPACETIDE」のベースです。

さらに、みんなに言われたのが、投資やアライアンスを検討するときに、業界の情報がどこにもないこと。各ニュースには書かれていますが、「これさえ読んだらわかるというものを紹介してください」と言われても、紹介するものがないんです。それで、レポートをつくりました。

すると今度は、海外の人から「日本の宇宙ビジネスのことを知りたいが日本語のものしかないから困る」と言われたので、英語版をつくって海外にばらまいてみました。そのような感じで、宇宙ビジネスを日本で仲間と立ち上げようとしています。

 

自ら生み出し、事業を生み出す人を応援する

柏谷さんありがとうございます。麻生さん、お願いします。

麻生さん麻生です。僕は今四つの仕事をしています。そのうち二つは自分で新たな事業をしていて、残る二つは新たな事業を生み出す人を応援する仕事をしています。

麻生さん自分の事業とは、まず一つが「ゲノムクリニック」というゲノム・DNA解析のベンチャーです。不妊治療領域で、より着床しやすい体外受精胚を選ぶための検査商品の臨床研究を進めています。あと乳がん・卵巣がんの遺伝子リスク判定検査というのを開発しています。

もう一つが「NewsPicks」というソーシャル経済メディア企業の非常勤役員をやっています。そこでは「NewsPicks for Business」という法人向けソリューション新規事業を立ち上げています。

自分以外の事業を応援するという活動の一つは、「アルファドライブ」という企業内新規事業を支援する会社です。主に大手企業の企業内新規事業を支援しているのですが、会社を立ち上げて半年くらいなります。

最後の一つ、「UB Ventures」という投資ファンドのパートナーとして、いわゆるスタートアップ企業に対して投資する仕事をしています。まとめますと、今日のテーマのようにあらゆる方法で新たな事業を生み出しています。よろしくお願いします。

新規事業をつくる人の、輝きも闇も見ている

柏谷さんでは櫻本さんお願いします

櫻本さんcotree(コトリー)」の櫻本と申します。今5期目になる会社で、「メンタルヘルス×IT」の領域で、今までに七つつほど事業を立ち上げてきています。

櫻本さんメインはオンラインカウンセリング事業で、臨床心理士と、病気ほどではないメンタルヘルスの問題を抱えた方とをマッチングする事業です。臨床心理士をはじめとしたカウンセラー100名程度が対応しています。ほかにも、老人向け、大学生向け、スキルシェアのサービス、当事者向けのコミュニティなど、新しい事業を運営しています。

もっとも最近立ち上げたのが「escort」という起業家向けのメンタルヘルスサポートサービスです。実は起業家のメンタルの問題は深刻で、あるデータによると起業家の4割にあたる人たちが不安障害、あるいは適応障害の基準を満たすと言われています。

その背景にはいろいろあるんですけれど、元々少し尖った人が起業しやすいという点に加えて、環境的なプレッシャーもありますし、問題を抱えたときに誰にも言えない部分もあります。今まで孤独な起業家を支えるような仕組みがなかったのです。日本のスタートアップ界隈はすごくマッチョなエコシステムになっていて、成長のサポートはたくさんあるのですが、安全性はあまり守られてこなかった。そのため、メンタルの不調を抱えたときに弱さを外にさらけだせずに倒れるまで続ける人がいます。

アメリカだと、自己破産が簡単なので簡単に倒産できると言いますよね。失敗してもリカバリーができるような環境が整っているのですが、日本では1回失敗したらおしまいという空気がかなりあります。そういう意味で、メンタルの支えを仕組みとしてつくっていけないだろうかと立ち上げました。起業家は無料で使うことができて、そのコストはベンチャーキャピタルをはじめとする起業を支援する立場の人たち、今は23社ほどが負担する仕組みになっています。

そういう意味で、新規事業をつくる人の輝きもそうですが、闇も見ているのがうちのサービスかなという気がします。輝きが強ければ強いほど、闇も深いので。そのあたりをセットで考えていくこともできるのかなということで、今日お話できたらと思っています。よろしくお願いします。

 

人を集めてつなげていくとスケールしていく

柏谷さんモデレーターの柏谷です。よろしくお願いします。新しい事業をつくることしかしていない人生を送ってきました。これまでは会社をつくって伸ばして上場して、また新しくつくって伸ばしてということをずっと続けてきたのですが、この頃、自分は新しいことや新しい事業つくるのが、好きなわけではないと気づいちゃったんです。

一同 (笑)

柏谷さん新しい事業を考えることだけが好きなんだと気づいたんですね。今までは、金も人も集めて責任が増して、新しい事業が立ち上がって思ったとおりできた。そこから最大化が始まるんですが「あ、俺これ全然好きじゃない」というのに気づきながらも、経営者はこういうことをやらなければいけないのかなとずっと思いながら仕事をしていました。でも、もういいかなと(笑)。

新しいことだけ考えて生きていけないかなと思い、「New」という会社を2018年につくりました。自分が考えた事業を大企業に持ち込み、その会社で社内公募させていただき、社内でプレゼンをしてチームを組成する。そして開発が始まる頃にフェードアウトします。合弁で進めることもあれば、コンサルフィーをいただくこともあります。自分ですべてをやらなくていいという会社です。新しい事業を考えるのが好きなので、このテーマはすごく楽しいなと思っています。

早速お聞きしたいのですが、結局新しい事業をつくるということは、人を動かすということに収斂するのではないかと僕は思っています。一緒に働く人を動かすという話もあれば、金を持っている人を動かすという話もあれば、情報を持っている人を動かすという話もあれば、お客さんを動かす話もあって、結局、人を動かしているだけじゃないかと。

なぜみなさんは人を動かせているのか? それぞれ自分を客観的に見たとき、どのような輝きがあるから人が動いてくれると思うか、聞いてみたいと思っています。

川路さんちょっと関係ないところから入ってもいいですか? さっき、ゼロイチ(0を1にする)で言う、0から0.1ぐらいのフェーズが好きなんだという話をカッシー(柏谷さん)としていたんです。昔は、起業家は全部やらなければならなくて、大企業のなかでもそういうことができなければいけないと思っていました。大企業の人はわりと10から100がうまくて、0、1~10までのフェーズはあまり経験したことがないので。

僕も正直、もうゼロイチで十分お腹いっぱいです。そこから先のマーケティングの計画や、どんと物量かましてみたいなところは、そんなに得意じゃないなと最近ようやくわかってきまして。それで、最近すごくいい言葉に出会いました。「赤字を掘る人」です。

新規事業を始める前は、赤字が絶対にたまるじゃないですか? この言い方がしっくりきて、「赤字を掘らせたらあいつはナンバーワンだな」と。この言葉は勲章だなと思います。だから、赤字を掘るのが得意な人と、その赤字を埋めて成長させるのが得意な人を分業したほうがいいんじゃないかと思っているのですが、やはり誰か連れてこなきゃいけない。

3人、5人でやる仕事だと、どうしてもそんなにスケールしません。人を集めてきてどんどんつなげていくとスケールしていきます。自分だけでできることには限りがあります。それは業界の多くの方々はみんなわかっています。でも大企業の人は全然わかっていなかったので、いろいろと学んで、最近はうちの会社に一生懸命「そういうスタイルの組織運営を」と言っています。

実はうちの会社、1000人ちょっとしかいないんです。普通の大企業は何千人といるのに。何かのプロジェクトを始めるときはだいたい2〜3人チームで、僕の部署も実は4人しかいません。4人でどうやって事業を何個も立ち上げるんだというときに、会社に対して「外部スタッフのサポート」という話をして、今、スペシャリティスタッフ連合を組もうとしています。

リーガル、マーケティング、広告などをなるべく社外にして、「三井不動産」はプロデューサーの立場で仕事ができないかなと。これは妄想なんですけど、今はそんなことを考えています。そうすると社員10人くらいで10個くらい事業を立ち上げられるんじゃないかと。

どうやって人を巻き込むかについては、実は今本当に悩んでいます。僕の場合は、力業(ちからわざ)でヘラヘラしながら飲んでいたらなんとなく手伝ってくれる感じがあるので。

関係会社のみなさんと飲むときに、職種の違う人を集めてシャッフルして飲んだりもします。「名刺交換は最後にして」とお願いします。名刺交換がないからプライベートな話に踏み込むしかないんです。最後に名刺交換をすると「あぁ」という感じになり、それがすごくよかった。そういうのも一つの方法論としてあるなと思ってきました。

柏谷さんすごくよくわかります。僕は最近口説くときはサウナにいきます。初対面の人に「ちなみに、銭湯とかサウナとかお嫌いですか?」と聞いて、好きですとなると「新橋のあそこいきましょう」と。

 

熱意が伝播してこそ「助けよう」と思う人が現れる

石田さん「SPACETIDE」の場合は、一言で言うと結集軸だという気がしています。2018年のカンファレンスは登壇者が40人くらいだったのですが、その4分の1がアメリカから来ています。しかも、渡航費をお支払いしていない人も結構います。お客さんは600人くらいで、運営は40人くらいのプロボノメンバーです。「SPACETIDE」には、フル社員がいないんです。

全員が本業を持っており、平日の夜を使って進めているプロボノメンバーがいます。でも、カンファレンスには内閣府や経産省、文科省、「JAXA」が後援をしてくれて、2018年は民間企業7社が協力や協賛をしてくれています。

カンファレンスを立ち上げた2015年のときも、やると決めてからカンファレンスまで2カ月でした。企画書1枚だけで、宇宙系ベンチャーと夜な夜な集まって「絶対やろう」と決めてから、内閣府に話を持っていったら、内閣府が共催してくれることに決まり、ひたすら走り回って会場を押さえたりしました。

僕たちも手弁当でやっていたのでお金も何もなかったので、みなさんお偉い方なんですけど、当時は登壇料をお支払いできなかったんです。

とにかくみんなに言ったのは、「日本で産業に関わるあらゆる人が集まる場がないから、そういう場を作って宇宙産業を拡大させたいんだ」ということです。産業をつくるときは全員が仲間なんだという結集軸を感じて、支えてあげたほうがいいなと思ってくれた人が、多かったんじゃないかなと思います。

柏谷さんそれが本当に本気だって伝わらないと、誰も動いてくれないじゃないですか? 一枚の企画書で人の心って動くんでしょうか。

石田さん日本の宇宙政策のアドバイザリーを行う宇宙政策委員会というのが日本政府にあって、僕は委員を3年半くらい続けていたので、そこでのネットワークがある程度ありました。

ある委員会のとき、委員の方が「ここで委員の先生方が議論してだけでなく、それぞれが何かをやることが大事だ」と言ったんですね。その言葉を僕は真に受けたわけです。やったほうがいいんじゃないかな、と。

それで、やると決めたらみんなが「や、やるんだ!?」という感じになって、そこからやり切ることにコミットして。多分その熱意が伝播していくのではないかと。みんながちょっと「助けてあげないと」と思ったのが、最初だと思います。

柏谷さん輝きの中でも、伝播する特性や「助けてあげなければいけない」と感じる性質がありそうな気がしてきました。

石田さん宇宙業界で特徴的なのは、多様な顔があることです。産業以外に、科学コミュニティが別にあり、さらにもう一つ安全保障があるわけです。政府委員会でも産業と科学と安全保障と3つ部会があり、プレイヤーが違いますし、予算がいろいろあります。これまで業界をリードしてきた企業も、新しくこの産業に入る企業もいて、それぞれの世界で協業や競争があります。

そうしたいろいろな歴史や関係性は踏まえた上で、「SPACETIDE」は、産業に中立であろうという精神を大事にしています。「みんなが集まるこの一日は、みんなで産業を前進させることを考えて欲しい」というスタンスです。例えば、メインスポンサー=1業種1社というのは、やめたんです。

そんなポリシーをがんばって貫いていたら、「なんとか支えてあげよう」と、競合の2社がスポンサーになってくださいました。このように「目の前の小さな市場を取り合うよりも、産業全体を前進・拡大させることを主眼にがんばろう」という空気感づくりもがんばっていました。

柏谷さん中立であることと、純粋なピュアな産業をつくろうよという思いが掛け合わさると、こういう輝きになるんですね。

 

少数の応援者との間に小さい輝きが生まれ、成果を生み出していく

柏谷さんありがとうございます。麻生さんの話もぜひ聞かせてください。

麻生さん巻き込んで輝いているという話があったかと思うんですけど、大して巻き込めていないし、大して輝いていないという話をしたいと思います。山のように新しいことをつくる人を見てきたり、自分でもやっていたりするんですけど、新しいものが生まれた瞬間って、実は誰からも応援されていないんです。

誰からも応援されていない状況から、少しずつ応援者が増えていくということなんだと思います。ある程度「輝いているね」と言われているときって、まぁまぁ応援者が増えている状態。そこにもっていくまでが闇なんです。

例えばですね、僕がやっている「ゲノムクリニック」という会社は、創業から半年ぐらい、実はいろんなアクセラレータープログラム(大手企業がスタートアップに対して出資する)に応募したんですが、全滅しているんです。全部落ちたんです。しかも、ご丁寧に企業から落ちた理由が返ってくる。市場性が…とか、実現可能性が…とか、いろいろな一文で落とされています。むちゃくちゃイライラするんです。

一同(笑)

麻生さん言ったじゃないかと。こんなに未来があって、こんなに儲かって、こんなに先進的だって話をしたじゃないかと。でも、全然わかってもらえない。このような体験の中で、大企業の担当者たちは今巻き込むタイミングではないんだなと思って、自分を慰めました。

僕がやっているゲノム・DNA解析の話は、知ったかぶっている人から「可能性がない」「既存のそれと何が違うの」と言われます。全ゲノム解析の話をしても、そのポテンシャルがどこにあるかはほとんどの人にわかってもらえない。

一方で、ごく少数ですが、熱狂的に応援してくれている人たちがいます。「千葉市産業振興財団」は何百とある千葉市のスタートアップの銘柄から、「この銘柄だ」といって補助金を出してくれました。千葉市の熊谷俊人市長は、「これを千葉市のグローバルスタンダードにする」と言ってくだいました。そういうめちゃくちゃ応援してくれる人たちとだけやろうと思っているんです。

万人を巻き込めているわけではなくて、ごく少数の応援者との間でだけ小さい輝きが生まれる。それを使ってちょっとずつ成果を生み出して、輝きを大きくしていくんじゃないかなと思います。

柏谷さん最初の応援者を見つけることについては、どう考えていますか?

麻生さん最初の応援者が見つかるまで動き続けるという話だと思っています。僕の事業も熱狂的な最初の応援者をいくつか見つけられていますが、その裏側では無残な一文で切り捨てる大人たちと、たくさん話しているんです。

柏谷さん順風満帆に輝いて見えていましたけど。輝きを続けるという意味では、そのマインドのコントロールみたいなものも、けっこう大事なのかなという気がしました。

麻生さん僕、VCをやっているんですけれど、自分自身がそういう起業家でもあるから、ベンチャーキャピタリストとしては最初の応援者になってあげたいというスタンスです。最近投資を発表した「EdTech(エドテック)」のベンチャーで「モノグサ」という会社がありまして、「記憶のプラットフォームをつくる」と言っているんです。そこにファーストインベスターとして出資したんです。

「記憶のプラットフォーム」って、誰に言っても理解してもらえないという、さっきの僕みたいな状況です。僕はそれすごく可能性があると、その先に開ける未来があるんじゃないかと思って「ファーストインベスターになる」と言ったら、セカンドインベスターとサードインベスターがついてくるんです。「わかんないんだけど応援したるわ」という人を、どうやって見つけるかが重要なんじゃないかなと、応援する側の立場の人として思います。

柏谷さん沁みるなあ。僕もエンジェル投資するとき、ファーストインベスターになります。理解されるまでに3年くらいかかりそうって人を応援すると、自分の学びが深まるというのもありますけども、楽しいですよね。

 

起業家にはタイプ別の「得意な巻き込み方」がある

柏谷さん櫻本さんの話も聞かせていただけますか?

櫻本さん先ほど申し上げた「escort」では、多くのVCを巻き込んでいやっているんですけど、最初にVC回りを始めたときは本当に反応が悪く「全然ピンとこない」みたいなことを言われました(笑)。

柏谷さん最初に協賛してくださったのは、メンタルヘルスにものすごく共感してくださる方で、ご自身もメンタルの問題を抱えたことがあり、そうした起業家も見たことがあって、問題意識を強く持ってくださった方です。そういう方が最初のスポンサーになってくださった後、本当に楽だったので、麻生さんの話は本当にそうだなと思いました。

最初は共感で訴えかけていたんですが、その後のスポンサー探しでは「こんな方々が参加していますけど、あなたたちももしよかったらどうぞ」というスタンスに切り替えることができてから、やりやすくなりました。

もう一つは、起業家を分類すると得意な巻き込み方があるという話です。今メンタルサポートをするにあたって、健康・不健康関係なく起業家のアセスメントをとって性格特性のタイプ別に見ているんです。

①「天下をとるぞ」と突き進んだ織田信長のように、設定したゴールに向かうエネルギーが強く、合目的である部分が強い人。 ②豊臣秀吉のように、未来に向けての楽しさやワクワク感を提示して「ここに参加したい」と思わせ、リードする人。 ③明智光秀のように、緻密で正しい戦術を持っている人。 ④徳川家康のように、受容してくれて役割を提供して承認してくれる「自分がいるから役に立てる」という感覚を生み出す、調整役のような人たち。

正しさ、合目的性、ワクワク感、役割の提供・受容性。この組み合わせで、響く人と響かない人がいるんです。リーダーシップとその受けとめ手の関係性で、構図が変わってくるのかなと思います。自分が得意なやり方が響く相手が最初の共感者として巻き込まれやすいんです。

柏谷さん櫻本さんの場合、七つの事業をやられて、そのなかで事業によって変えることもあるんですか? あと、自分の中でも巻き込み方の変遷ってあったでしょうか?

櫻本さん最初の事業のとき、一つ目のハードルは心理の専門家を巻き込むところだったんです。心理士業界はすごく固い業界で、オンラインで心理療法なんかできるわけがないというところからスタートしました。専門家を巻き込むプロセスについてはVCのときとそれほど変わらなくて、最初に納得してくれる人、共感してくれる人を巻き込んで、そこからちょっとずつ広がっていきました。

最初のクライアントさんを探すことに一番苦労して、それがうまくいくと、そのままいくこともあるし、いかないこともあるという感じです。

もう一つ、巻き込んでないというケースもあって、「LITALICO」さんから事業譲渡していただいた、うつ病当事者向けのコミュニティサイト「U2plus」があるんですけど、これはそもそも事業のファンがいたんです。この事業を「LITALICO」さんがやめるとなったとき、ファンの人たちが「やめないで」となって「つきましては引き受けてくれませんか」と、いろいろな方から連絡をいただいたんです。

我々が「メンタルヘルス×IT」の領域で事業を行っている人たちというのをある程度ブランディングしていたので、親和性があるでしょうと、話が飛び込んできたケースです。

柏谷さんめちゃくちゃ輝いていると、向こうからくるんですね。

櫻本さんいいこと言いますね(笑)。もちろん、事業性が生まれるような事業は簡単には生まれないわけですが、発信をしていると、そういう機会は多くありますね。

柏谷さんありがとうございます。時間になりましたので、ここで終わります。みなさん、ありがとうございました。

小久保よしの 編集者
フリーランス編集者・ライター。編集プロダクションを経て2003年よりフリーランス。担当した書籍は『だから、ぼくは農家をスターにする』高橋博之(CCC)、『わたし、解体はじめました ─狩猟女子の暮らしづくり』畠山千春(木楽舎)など。 当サイトの他、雑誌『ソトコト』やサイト「ハフィントンポスト」などの取材で全国を駆け回り、東京と地方の行き来のなかで見えてくる日本の「今」を切り取っている。「各地で奮闘されている方の良き翻訳者・伝え手」になりたいです。
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