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欲深さと、お金の流れと、未来。「新しい経済」をつくるために私たちが今考えていること。【ミラツク年次フォーラム2019】

フォーラム

毎年12月23日に開催している「ミラツク年次フォーラム」。一般公開はせず、1年間ミラツクとご縁のあった方々に、感謝を込めてお集まりいただく招待制のフォーラムです。

セッション4では、「私たちは経済で何ができるのか」というテーマでセッションを行いました。話は意外にも「欲深さ」というキーワードから経済の話へと展開していきます。今、どのような視点で自らの仕事や社会、未来を見つめ直すべきなのか、ヒントにあふれたセッションとなりました。モデレーターは『NPO法人ミラツク』代表の西村です。

(フォーラム撮影:廣川慶明)

この記事は、ミラツクが運営するメンバーシップ「ROOM」によって運営されています。http://room.emerging-future.org/

登壇者プロフィール
米良はるかさん
READYFOR株式会社 代表取締役CEO
2010年、慶応義塾大学経済学部卒業、12年同大学院メディアデザイン研究科修了。大学院在学中にオーマ株式会社にて日本初・国内最大級のクラウドファンディングサービス「READYFOR」を立ち上げ、2014年にREADYFOR株式会社の代表取締役CEOに就任。World Economic Forumグローバルシェイパーズ2011に選出、日本人史上最年少でダボス会議に参加。首相官邸「人生100年時代構想会議」の議員や内閣官房 「歴史的資源を活用した観光まちづくり推進室」専門家を務める。
https://readyfor.jp/
田口一成さん
株式会社ボーダレス・ジャパン 代表取締役社長
福岡県出身。大学2年時に発展途上国で栄養失調に苦しむ子どもの映像を見て「これぞ自分が人生をかける価値がある」と決意。株式会社ミスミに入社後25歳 で独立し、ソーシャルビジネスしかやらない会社ボーダレス・ジャパンを創業。2018年には、社会起業家の数だけ社会課題が解決されるという考えのもと、社会起業家養成所「ボーダレスアカデミー」を開校。社会起業家のプラットフォーム拡大を通して1,000の事業を生み出し、社会を変えることを目指している。
https://www.borderless-japan.com/
岩井睦雄さん
JT(日本たばこ産業株式会社) 代表取締役副社長(※フォーラム開催当時。2020年5月現在は取締役副会長)/JT International Group Holding B.V. 取締役会長
1983年、東京大学経済学部卒業、日本専売公社(現・日本たばこ産業株式会社)入社。人事部、経営企画部、銀行研修(富士銀行ロンドン支店)を経て、経営企画部にて、ビジョン策定、中期計画、組織文化変革、コントローラー、ビジネス・ディベロップメントなどを経験。一般社団法人日本アスペン研究所監事、一般社団法人ダイアログ・ジャパン・ソサイエティー理事なども務める。
https://www.jti.co.jp/
比屋根隆さん
株式会社レキサス 代表取締役
沖縄国際大学商経学部卒業。大学在学中にIT企業を従兄弟とともに設立。1998年、独立して株式会社レキサスを設立。2008年より、沖縄の次世代リーダーを発掘し育成するために、人財育成プロジェクト「IT frogs(現・Ryukyufrogs)」をスタート。沖縄県内の学生を対象に、起業家精神の形成、及びグローバル視点研修や各種技術研修への参加、IT産業の世界的中心地・シリコンバレーへの派遣などを実施。2017年9月に人財育成事業部門が独立、株式会社FROGSとなる。ミラツクAward2017を受賞。
https://www.ryukyu-frogs.com/
コメンテーター
占部まりさん

宇沢国際学館 代表取締役/医師
故・宇沢弘文氏の長女。東京慈恵医科大学卒業、1992~4 年、メイヨークリニックポストドクトラルリサーチフェロー。現在は地域医療の充実を目指し内科医として勤務。2014年、宇沢弘文氏の逝去に伴い、宇沢国際学館の取締役に就任。講演録などを編集した『人間の経済』(新潮新書)の上梓につなげるなど、氏の思想を伝える活動をしている。

経営者として新しい経済や社会の仕組みにチャレンジしたい

西村こちらのセッションは「私たちは経済で何ができるのか」というテーマについて4人の登壇者とコメンテーターを選びました。最初に簡単な自己紹介を、米良さんから順番にお願いできればと思います。

米良さんこんにちは。『READYFOR』というクラウドファンディングサービス運営会社の代表をしている米良と申します、よろしくお願いします。『ミラツク』には6年、7年ぐらい関わらせていただいていまして、(西村)勇哉さんのこういう人をつなげるネットワークとオーラに(笑)、いつもいろんな相談をさせてもらっています。

『READYFOR』もおかげさまで2011年のサービス開始から9年目になり、クラウドファンディングの市場もどんどん成長してきていると実感しています。特に私たちが実現したいなと思っている社会は、世の中を良くしていくためのさまざまな取り組みにもっとお金が流れる社会です。短期的な利益が出るものに対してはお金が回るようになってきていると思いますが、世の中を良くしていくための取り組みの領域ではまだまだお金が足りてないと思っているので、その問題をテクノロジーで解決できる会社にしていきたいと思っています。会社とメンバー、みんなで成長している段階です。今日はよろしくお願いします。

田口さんソーシャルビジネスといわれる分野を専門に『ボーダレス・ジャパン』という会社をやっています、代表の田口です。よろしくお願いします。ソーシャルビジネスを立ち上げる人をたくさん集めて、チームとしてやっていこうという起業の集合体みたいな感じです。今は9カ国くらいの32社ですね。アフリカ、中米、ヨーロッパ、アジア。毎月1社か2社が新しく誕生していて、年間100社立ち上がるよう、研究しながらそういう仕組みをつくっていきたいなと思っています。

岩井さん皆さん、こんにちは。『JT(日本たばこ産業)』という会社でたばこ事業を担当しています、岩井と申します。日本の企業で、ある意味中長期的なことも考えながら、表面に見えているところ以外にもいろんな活動をしていることも今日は少しお話しできればいいかなと思って参りました。よろしくお願いいたします。

比屋根さん沖縄から来ました、比屋根といいます。沖縄の経済の発展と世界の平和、調和ですね。それをバランスできるような事業をやっていきたいと、ITの会社や、「Ryukyufrogs」という沖縄の未来のイノベーターを発掘する事業、2018年から新しくチャレンジしている、沖縄県民が一つになって沖縄の課題を解決していく仕組みをつくる『うむさんラボ』という活動も始めています。

来年(2020年)以降は、クラウドファンディングというかコミュニティファンディングで、“株式会社沖縄県”に投資するための財布を、県民や沖縄を好きだと言ってくれる人からお預かりしながら課題に対して回していく、そんな取り組みにチャレンジしていきたいと思っています。よろしくお願いします。

西村コメンテーターとして、占部まりさんです。

占部さんみなさん、宇沢弘文という経済学者をご存知でしょうか? 「大切なものは決してお金に換えてはいけない」ということをベースに数理経済学で理論を打ち立てた、変わった人です。私は長女で占部まりと申します。よろしくお願いします。

西村このセッションのテーマは「経済って社会にとって何なのか、それってどうやったらいいの?」なんですけど、それをちゃんと考え直したいなと思ったきっかけが、占部さんのお父様である宇沢先生のシンポジウムに呼んでいただいたことでした。行くからには勉強したいなと(本を)読んでいたら、経済学に可能性を感じました。新しい経済学を、あえて経済学ということで研究をされている方がいらっしゃったと。残念ながら僕はお会いできていなくて、亡くなられたんですけども。

どうすればその実現に向かっていけるかを考えたいなと思ったとき、このメンバーでいくと可能性が見えるんじゃないかと。ベストメンバーだと思っています。経済をまだまだアップデートできるとしたら、どうやってすればいいのかを皆さんの経験と知識をもとにお話ができたら。まずは比屋根さんに、『レキサス』の経緯と今されている活動の背景もお話しいただければ。

比屋根さん1998年に『レキサス』を創業しました。これが今も私の活動の土台です。創業当時は、沖縄にコールセンターがたくさんできて、「安いから沖縄」と言われ、県民もそれが当たり前のようにやっていました。それに違和感があって、なんでこんな素敵な島なのにこういう雰囲気になってるんだろうと。自分が住んでいる島をもっと豊かに、東京と同じような仕事ができて、同じような年収をもらえるような会社をつくりたいと立ち上げました。

その後いろんなプロダクトを生み、シリコンバレーやアジアに行き、いろんな経営者に会うなかで、僕自身の視点がすごく上がってきて、沖縄のIT産業を良くしたいというところから、沖縄を良くする経営者でありたいなと自然に思うようになっていったんですね。

じゃあ沖縄を良くするため何をしたらいいのかと考えたとき、教育だろうと。10年、20年、30年先の新しい沖縄をつくってくれる、国内外にネットワークを持つ志のある若者を発掘育成しようと、「Ryukyufrogs(リュウキュウフロッグス)」というプロジェクトを立ち上げました。県の補助金は一切使わずに、民間で未来に投資する文化を沖縄につくっていきたいと、7社の協賛企業からスタートして、中学、高校、大学生を毎年選抜して、6カ月間のチェンジメーカープログラムを行っています。

今年(2019年)11年目で、他地域に飛び出して茨城でも「Hitachifrogs(ヒタチフロッグス)」が始まりました。北海道や高知にも広がっています。そこで僕は「Ryukyufrogs」を手放し、別会社化して別の経営者に任せることにしました。そのとき、次に見えてきた世界があって、沖縄にいると平和、調和ってすごく身近に感じるんですね。戦争の体験だったり、基地の課題がまだあったりするので。僕は地球に生まれた地球人として、かつ沖縄という場所は、平和、調和を発信していい場所だと思うので、そういう役割で生まれた経営者として、これから新しい経済や社会の仕組みにチャレンジしたいんです。

人が変わっていく体験を通して、社会や経済のシステムが変わっていくという仮説をもっています。今後は沖縄の県民や沖縄を応援してくれる方々をうまくつなぎながら、10年ぐらいかけて実証実験を2、3回転回してみたいと思っています。

今後10年、20年で資金調達のあり方は変わる

西村米良さん、経済を回すだけじゃなく状況を良くしていくと考えたとき、経済自体もアップデートしないといけないとしたら、どういう方向に行けばいいのでしょう。

米良さんお金の流れを変えることを、一番やらなきゃいけないんじゃないかなと思っています。私は2年前に病気になって、7カ月療養していたとき、家でいろんなことを考えました。療養前がちょうど29歳から30歳になるタイミングで、20代は「クラウドファンディングの事業を成長させなきゃ!」と一心不乱にやっていたのですが、病気が治ったとして、30歳以降に自分の人生を何に使うんだろうなと。

休んでいるとき、この場だから言いますけど、「米良さんはすごく欲深い人間だ」って言われたことがあったんですね(笑)。私、「欲深い人間」っていう言葉に良いイメージがなくて、そう言われて辛かったんですよ。私は誰かの挑戦を応援することが好きだし、心からそういう世界を望んでいるんだけど、自分はその世界を実現するトップランナーでいたいという気持ちも強かった。だから「欲深い」と言われたとき、「もっと心が優しい人じゃないとダメなのかな」と思って悩んだんです。

療養中にその問題解決もしようと思っていろんな本を読み、アダム・スミスの『道徳感情論』や渋沢栄一の『論語と算盤』を読んで「資本主義が成り立つためには、欲と社会性が両立していないと回らないんだ。私のことだ」と思ったんです。「私がアップデートするのか」と思って、仕事に復帰してからは、「そういう世界を実現したい、自分が実現するんだ」という思いでやっています。

西村田口さん、欲深いことの両立、どんな風に思いますか?

田口さん米良さんがもっているのは野望だと思うんですよ。野望は大切だと思うんですね。個人的なものよりもっと大きなサイズの「社会をこうしたい」というものを野望っていうので、そういう欲深さは必要かなと。一方で、本当は経済って「経世済民」、世を治めて民を救うというための手段なんですよね。

だから両立というよりも、もともとの経済に立ち返って、民を救うため、世を救うため、社会をつくるための手段が経済であることが大前提で、目的は稼ぐことではない。けじめとして利益を出す、だけど一つひとつに目的があって、それを経済という形で回していますという話かなと思っています。

西村会社は、本当はこうあったほうがおもしろい、というのはありますか?

田口さん欲の象徴的なものは既得権益なんです。株式会社でいけてないなと思うのが、資本主義って資本家がお金を増やす手段としてあるんですよね。例えばビジネスをやるとすると、お金をどこかから借りないといけないんですよ。だから銀行や投資家はいつまでたってもお金持ち。もちろんリスクテイクはしてくれるんだけど、「最初に持ってるもん勝ち」が残っているんですね。僕は、そこはデザインし直したほうがいいんじゃないかなと思っています。

一つのやり方、自分でコントロールできることとしては、僕は創業者ですけども、株式配当ゼロと定款に書いているんですね。いつまでも既得権益として配当と言う形にすると、社会全体としては最初にお金を持っていた人にお金が流れる仕組みになっちゃう。僕は投資家じゃなく創業者としての配当を拒否して、そのお金をどう使うかも「出た利益はすべて社員の福利厚生か、新たなソーシャルビジネスへの再投資にしか使えない」と定款に書いています。

西村『ミラツク』はNPOで、NPOにはそもそも配当がない、配当しようにも株式は存在しなくて所有権をもっていない。代表権はあるんですけど、3人ぐらいが嫌だって言ったら辞めさせられる弱い立場です(笑)。利益も法律上全部持ち込越さないといけないと。それでもNPOじゃなくて、役割が違うという意味で株式会社の価値があると思っていて、その意義は……。

田口さん経済という、ノンプロフィットオーガニゼーションである必要はないと思うんです。経済自体をやっていく主体者である企業のあり方を変えていくことが、社会づくりとして大切だと思っています。勇哉の言う通り、役割分担だと思うんですよ。

一方で、基本的に資本主義って効率の追求なんで、言い方は悪いですけど、効率の悪い人は採用面接に落ちてしまう。そういう人たちを含めた形でビジネスを回し、経済に入れていく役割。経済がどうしても難しいっていうところをどうにかしていく人という役割分担でやっています。今までの効率追求だけだと取り残される人たちがいて、その人も含めたデザインをする。いて良いよねと。

西村お金の流れを変えていくとき、NPOと良い株式会社って流れ先が違うわけじゃないですか。良い会社側にお金の流れを出していくためにはどうしたらいいか。

米良さんそれは短期で、クォーター(四半期)で利益が急成長しているところではなくて、持続可能なモデルをつくっている会社が評価されるためにどうしたらいいかですよね。

西村配当しない、たぶん上場もしない、なるほどと。その状況でもお金があることでできることがあると。どうやって田口さんのところにお金が流れていくようにできるだろう?

米良さん難しいなと思うんですけど、上場はしないけど配当する会社を許すような株主は絶対いるはずで。今までって「東証で上場しましょう」とかでしたけど、会社に対する関わり方は多様になってきていると思います。クラウドファンディングがその象徴で、法人格より「何をやっているか」のほうに共感して、長期で応援したいっていうことってあると思うんですよ。

一番近かったのがICO(新規仮想通貨公開)です。アイデアをブロックチェーンで管理してみんながその権利を有する、それが市場に出たときに交換できるから価値が上がるかもしれないよねと。市場の整備がぐちゃぐちゃだったので崩壊してしまいましたが、絶対ここから10年、20年の単位で資金調達のあり方は変わります。田口さんの思っていることが分かって「この人すごくかっこいいこと言ってるし、この人のこの事業に投資したい」と投資効率が良くなれば、そういう世界は起こると思います。管理するためのテクノロジーがここ数年から10年で大きく変わるので、そのような分野にも挑戦したいなと思ってます。

社会的な活動をするプレイヤーを増やすことが大切

西村田口さん、言いたいことはありますか?

田口さん実は、この分野ってお金はけっこうあるんですよ。あえて社会起業家という言葉が使われる理由があり、投資家にも社会投資家ってめちゃくちゃいるんですよね。お金ではなくて、社会的リターンのために自分のお金を投資したいという人。でも、社会的な投資をしたいと言ったときに投資する先がいない。正確に言うと小さすぎて効率が悪いことが問題だと思います。

ある程度の規模にならないと、投資商品もつくれないわけですね。でもソーシャルベンチャーは規模で言うとそんなに大きくない。だから、小さなソーシャルベンチャーがたくさん生まれて、全体としての規模を出すことでこういう社会投資家の受け皿になっていく。そういうことが必要だと思っています。その一つの形が『ボーダレス・ジャパン』ではあるんですよね。

社会的な活動をするプレイヤーがすごく少ないんです。それを増やすことが大切で、それが束になったある程度のサイズになれば、むしろお金出したいというところは多いです。

西村田口さんのところって、グループ全体に対して融資や投資をしてもらってる?

田口さんそうです。内訳は一切見ない。

西村預けたグループ会社がどう使うかは任せたということですね。

田口さんそう。全体としてみてもらっている。

西村ある種技術的に、バーチャルにやってるのがクラウドファンディングで、一人ひとりが頑張って応援してくださいって言っても大変なんだけど、プラットフォームになることでそこに信頼があったり。

米良さん私たちは一個一個の取り組みを応援したい人と、応援されたい人のマッチングの精度を上げたいと思っていて、結局ファンドに近いんですよね。括って、収益が良いところと悪いところを帳尻合わせますよというのも一つのやり方で。マッチングを個別に探しに行くのは大変だし、一つの案件だけだとボラティリティ(価格変動の度合い)が高い。それでも「この人のこの事業にお金を出したい」というニーズはあると思うので、管理コストを下げて、応援したい人と応援されたい人がきちんとつながれる状況をどうつくれるか、挑戦していきたいと思っています。

西村やり方は違うけど、やっていることは似ているわけですね。岩井さん、どう思いますか。

岩井さんとても本質的な議論が始まったので、私も考えていたんですけど、今の資本主義経済の仕組みはけっこう力強い制度だなと思います。と言うのは、もともと株式会社は(大航海時代に)スパイスを買いに行く船に投資をする、でも有限責任で沈んじゃったらそれで終わりみたいな、無限責任じゃない形の投資をすることで利益が得られるときもあれば、まさにリスクマネーをきっちりと担う、貿易をして欲しいものと欲しいものがつながっていく、ある意味で社会的にもより双方が豊かに、win-winになるものとして発明された制度です。

先ほどの、配当しないというのは一つの方針ですばらしいなと思うんですけど、配当してちゃんとまた違うところに投資してくれれば、もしかすると一つの会社だと間違うかもしれないことを、より高い水準でやってくれるかもしれない。そういう風にお金を回すマクロのシステムとしては、元々の理想はすごく優れてるんだけど、現実を見ているとそうじゃなく見えるのは何なんだろうと問題設定をしなければいけないなとずっと考えていて。

だから小魚の群れでやっていくやり方もあるし、クラウドファンディングもある。大企業では、うまく中長期的にやっていることを、今の投資家が報いられることをバランスしながら、時間のバランスも取りながら、自分たちもトランスフォーメーションしていくことをやっています。

自分の生業(なりわい)はたばこ屋だから、心の豊かさとか、そういうものを提供してきたし、でも身体的なリスクがあるんだったらリスクがより少ない形でやっていきたい。生業としてより良くしていきたいし、また今のビジネスを超えた未来の心の豊かさは何なんだろうと。いろんなものが出てくる一番の根底は「本当にどういう社会をつくりたくて、どこにお金を流したいか」という、一人ひとりの中にあるマインドのところまで戻らないと。私も今ちょうど『道徳感情論』を一生懸命精読しているところなんです。

米良さんそうなんですか。

岩井さんそれを読みながら、まさに人間の中にある欲、どんどん良くしたいとかもっと儲けたいとか名誉を得たいということに対して、「いかに規律あるフェアな競争のなかでそれを実現していくか」っていうのがアダム・スミスの本質であって、単にみんな自由になって勝手にやる、弱肉強食の世界で競争しなさいみたいなことは全然言ってないんですよ。

そこにちゃんと僕らも戻って、私たちは何をするためにお金を出すのか、それは自分がいいと思う社会をつくりたいからと、一人ひとりがちゃんと考えて選択をすることが大切だと、みなさんの話を聞いて感じました。

100年200年もつ社会をつくるための投資判断ができるように

西村さっきの米良さんの欲深い話でいくと、まさに僕はむちゃくちゃ欲深いと思うんです。できたら毎年1000億円ぐらい欲しい。だってそれぐらいかけてやれることっていっぱいあるから。1000年とかそのぐらいまで残るような価値あるものをつくりたいということに対して欲がある。そういう欲とそうじゃない欲、二つの欲をどういう風にバランスするのか。欲をなくしてしまうとそれで止まった世界になっちゃう。

田口さん欲ってキリがないところが難しいところなんです。人間に本能的に備わったものなのでこれを否定しても先に進まないと思うんですよね。今のビジネスは野放し状態になっていて、利益出すんだったら何やってもいいとなっちゃうということで、SDGs、サステナブル・ディベロップメント・ゴールズが出てくるのは良い話だと思うんですよ。僕はSDRs、サステナブル・ディベロップメント・ルールズってすべきじゃないかって言っているんです。これから地球はサステナブルにディベロップメントしていくためのゴールにしたらダメだと思っていて。

何にでもルールがあるから、ビジネスではビジネスのルールをこれからつくりましょう、というのをSDGsとしてこれからやっていくと。いろんな形態、取り組み方があっていいし、別に大企業を否定するつもりもない。だけど一つのルールは持ってやらないと、何か資源争奪戦みたいなのはいい加減やめないといけないよねと。そういった意味で、欲のコントロールをするのがこれからの時代すごく大切だなと。

西村比屋根さん、沖縄が、例えば今の話のような会社のあり方が増えることによって良くなりそうな感じがありますか。

比屋根さん僕は東京と沖縄を行ったり来たりしますけど、沖縄に戻ったとき理屈じゃなくホッとするんですね。離島に行ってゆったりとした時間をもったり、お年寄りの話を聞くケースも多いですし、(沖縄の言葉で)「ゆいまーる」、助け合いの文化がありますし。一人ひとりの心の、人として本来持っているものを磨くのは、沖縄はやりやすいんじゃないかなと。

だから、良くなっていくと思います。沖縄を実験台にして、素敵な、「こういうことね」っていうのはつくれると思うんですね。沖縄は観光産業が一番の産業で、観光って交流産業だと思っているので、沖縄の成功したモデルを海外から来る人に体験してもらい、それぞれの国や地域に持ち帰ってもらうことまでできれば、沖縄を世界に、県民としても誇れる場所に育てられるんじゃないか。そこまでやれそうなイメージはあります。

西村米良さんと田口さんに聞きたいんですけど、とにかくリターンを得るために手段を選ばないみたいなことになると、リターンの部分を目的化することによって、リターンを得るためにちょっとハメを外すみたいなことが起こりかねない。それに置き換わる、他に約束できるものが何かあれば変わらないかなと。

田口さん投資家にはほんとにいろんな人たちがいるんですよ。みんな目的が違って、目的も一個だけじゃない。

こういう社会性と経済性のバランスに対してやってきたプレイヤーが少ないし、時代の要請もここにあるんですね。ESG投資と言われますけども、こういうことを放置して投資をやっちゃいけないし、この部分の目的においてシステムにちょっと不備があるというか、足りてないのかなって思っているんです。ごめんなさい、質問の答えとしては、目的をちゃんと合わせるということで、リターンうんぬんじゃないのかなとちょっと思います。

米良さん人間の幸せの、所得の効用のグラフって2000万円くらいから逓減していくっていう話があるじゃないですか。一定のところからはどうしても増やしたいわけではないというデータが出ているんですが、でもなんとなくお金が増えると良いと刷り込まれていて、(投資のシーンで)「増えません」と「増える」なら「増える」ほうを選ぶ。その投資によって社会はどうなるのかといった話は考えないというか、頭を使わないで済むように設計されているのでずるいなと思っていて。

選択肢として「こういう風に社会が良くなります」と説明されてもよくわからないので、「1年で100万増えます」と言われると判断が楽で。社会を良くするほうは真剣に考えた後でお金を出そうか、というようになってしまっていて、選ぶための状況がまだできていないんだと思います。

岩井さんちゃんと見えないという感じがあると思うんですよ。個人で投資をするんだったら、一生懸命時間をかければもうちょっと調べたりできるんですけど。ESG投資(環境・社会・ガバナンス要素も考慮した投資)が一つのやり方で、こういうところだけに絞って投資する、でも今の売り文句は「そっちのほうがかえってリターンが高いです」と最後は言わなきゃいけない悲しい現実がある。

儲けは少ないけどもまさにサステナブルだと、100年200年もつ社会をつくるために投資をしています、そっちのファンドに入れたい、こっちよりもこっちだと一人ひとりがそういう判断ができるようになっていくといいなと思います。

究極を言うと、事業って際限なく儲かることではなくて、潰れないでちゃんと生業がつながることでもある。長寿企業のほうがきっと社会的にも意味があるし、いいんじゃないかと。

豊かに暮らせる社会を目指すのが、経済学がするべきこと

西村最後にコメントや感想と、占部さんに全体のコメントをいただこうと思います。

米良さんありがとうございました。すごく楽しかったです。私はソーシャルとスタートアップの両方に属していますが、ソーシャルのセクターってすばらしい想いがある人がたくさんいますし、現場の課題に向き合っている人もいるのですが、スケーラブルにさせたり仕組みにするというところが苦手な人が多いと思っています。スタートアップの市場も、お金がついてこないので、仕組み化するメンバーが揃わず社会の課題解決が前に進んでないと感じています。

本当の意味で社会課題の解決に寄与するためには、やっぱりお金を流さなきゃいけないと強く思っていて、それを形にして、マッチングをやっていきたいです。社会起業家が課題解決にどんどん向き合っていこうとなるためにも、そこのお金の流れを現場レベルでも変えていきたいし、これからも頑張っていきたいと思いました。

田口さん未来のことを考えるうえで、SDGsという言葉を僕はあんまり使わないんですよね。何でかというと、いつまでディベロップメントする気なんですかと。サステナブルゴールズでいいじゃんっていうのが本質的なテーマなんですね。だから未来のために生きなくていいと思うんですよ。今ちゃんとみんなが幸せに暮らせるようになるように、助け合いながら人類として成長しないといけないと思っています。さっき(岩井さんが)「生業」っておっしゃいましたけど、僕は「営み」って言葉をよく使うんですよ。自分たちがやっていることは人としての営みだよねと。

僕が大切にしている価値観、人生に対する考え方は、小学生のとき先生に「帰るときは来たときよりもきれいにして帰るんだよ」って言われたじゃないですか、それと同じだと思っていて。死ぬときに生まれたときよりきれいな社会にして死ぬというのが、けじめだと思っています。今の時代を間借りしているだけですから。生まれたときより良い世界にして、地球にして死んでいくことを脈々とみんなが続けていくのが自然な姿だと思うし、そういう生き方を改めて問い直すことが本当の意味でのアップデートというか、進歩だと思います。ありがとうございました。

岩井さん楽しく過ごさせていただきました。簡単に解を出せる問題じゃないし、僕は資本主義だけじゃなくて、科学技術が持ってるパワーを解放するための資本主義であるとか、それを達成するための自由主義が相まって今社会があって、それに対して未来がどうなるか、そういう難しい問題をちゃんと自分ごととして考えることがすごく大切だなと、今日もう一度自覚をしました。

最近好きな言葉で、Negative Capability(能力)って言葉があります。Positive Capabilityは、Aに対してこれはBですねと即座に解決策を出せる能力。Negative Capabilityは、難しい問題から逃げずに、または矛盾したこと、こっちを立てればあっちが立たないみたいなことに身を委ねて、自分で考える能力。それを磨ける形態を取って欲しいんです。そういう人が増えて「今はここが正しいと思うからもう一歩そちらに向かって進んでみよう」と考えられる、そのために対話をしたり、いろんな新しい技術の話を聞いたりして、そこからイマジネーションされることをまた人と対話しながら、より良いことに向かっていけると良いなと思いました。ありがとうございました。

比屋根さん経済の根底には人、社会があると思うので、人のあり方というのが問われているのが本質的な話かなと思っています。今お金の流れをつくることと、お金に色をつける、いろんな色があって良いと思うんですけど、それを起業家が勘案した色です、出す側もその色なら出したい、といういろんなグラデーションがあって良いと思うんですけど、そのためにも人の持っている視座、心のあり方を高めていくのが、これからの人類が必要とするものじゃないかなと思います。

日本人は元々精神性から調和、文化を大事にします。日本人が本来持っているものをしっかり僕らが思い出せば、本質的な社会のあり方、お金のあり方、日本から世界のこれからをリードできるような事業の形、お金の形をつくれると僕は思っています。世の中をよくするための新しい経済の形は、日本人がリーダーシップを発揮していくと思っていますので。みんなで学び合い、小さな事例をつくりながら、思案して世界に発信できる、本質的な投資家が日本に増えたという状況を一緒につくれれば良いなと思いました。ありがとうございました。

占部さんここで心が動いた人はぜひ宇沢の本を読んで欲しいなと(笑)。古典経済学って、数理経済学、数式に当てはめるときに、面倒くさいから人間の心を全部省いちゃったのですよね。宇沢は、経済というのは人間の心が動くから動くのじゃないかと言った経済学者なのです。目指していたのは豊かな社会で、人間本来はリベラルなものであると。でもそのリベラルは他人の自由を損害しないという、そういった意味でのリベラルで、そのことを基盤に一人ひとりが豊かに暮らせる社会を目指すのが、経済学がするべきことだと言っておりました。

そのときに何が必要かというのを『社会的共通資本』にまとめたのですけど、一番大事なのが自然。あとは社会的インフラストラクチャー、電気とか水道とかそういったものと、制度資本と言われている教育とか医療。こういったものを社会として守っておけば、その先からくる経済活動は自由になるわけですよ。

社会的共通資本で基盤がしっかりしていて、その中で新しい事業、新しい良いことが出て社会が変わってきたら、次に進むことをより考えやすいだろうと、人々の自由度が上がる社会になるのじゃないかなと思うわけです。

SDGsとの関係性なのですが、実はローマ法皇、ヨハネ・パウロ2世に父はレクチャーをしたことがありました。1891年、まさに蒸気機関車なんかが出てきた産業革命のときに、資本家にお金が集まるようになってしまって、一般の労働者が非常に苦しんでいた。そこでレオ教皇がカトリックの総本山としては画期的な、社会的問題にみんな向き合ってくれと歴史的な回勅を出したんですね。100年記念のときに新しい回勅をつくろうと。それでヨハネ・パウロ2世に呼ばれて、父が社会的共通資本の話をしたのです。

その会場に実は国連顧問のジェフリー・サックスさんがいました。彼がSDGsを取りまとめた人なのですけども、彼も宇沢から影響を受けたと言ってくれています。『社会的共通資本』を読んでもらうと、SDGsで何かモヤモヤしていることが分かってくるのじゃないかと感じています。

SDGsのカラフルなポスターがありますよね。豊かな社会、誰一人として取り残さない社会をつくるためには、17のゴールが有機的につながらないとできない。それを有機的につなぐものが社会的共通資本ではないかと思っています。SDGsのゴール、2030年です。その先も今から考えていくときなのだなと思っていますので、繰り返しになりますが読んでみてください(笑)。よろしくお願いします。

西村ありがとうございます。このセッションは過去最高でした。何が過去最高かというと、これだけ何も考えなかったのに最初の問いに戻ってこれた(笑)。同じテーマを違う角度から登っていくことが大切かなと思っています。米良さん、田口さん、岩井さん、比屋根さん、占部さん、ありがとうございました。

この記事は、ミラツクが運営するメンバーシップ「ROOM」によって運営されています。http://room.emerging-future.org/

次回ミラツクフォーラムに参加を希望される方は、ミラツクが運営するメンバーシップ「ROOM」にご参加ください。ミラツクフォーラムは、メンバー向けの招待制の会として開催されます。
ROOMの登録:http://room.emerging-future.org/
ROOMの背景:https://note.com/miratuku/n/nd430ea674a7f
NPO法人ミラツク では、2016~2019の4年間でミラツク年次フォーラムにおいて行われた33のセッションの記事を分析し、783要素、小項目441、中項目172、大項目46に構造化しました。詳しくは「こちら」をご覧ください。
小久保よしの 編集者
フリーランス編集者・ライター。編集プロダクションを経て2003年よりフリーランス。担当した書籍は『だから、ぼくは農家をスターにする』高橋博之(CCC)、『わたし、解体はじめました ─狩猟女子の暮らしづくり』畠山千春(木楽舎)など。 当サイトの他、雑誌『ソトコト』やサイト「ハフィントンポスト」などの取材で全国を駆け回り、東京と地方の行き来のなかで見えてくる日本の「今」を切り取っている。「各地で奮闘されている方の良き翻訳者・伝え手」になりたいです。
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