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“ないなら、創る”から始まった「株式会社リバネス」は、今も未来を創り続けている【ミラツクフォーラム2018/ミラツクアワード2018】

フォーラム

毎年12月23日に開催される恒例の「ミラツク年次フォーラム」。一般公開はせず、1年間ミラツクとご縁のあった方々に感謝を込めてお集まりいただく招待制のフォーラムです。

ランチセッションでは「ミラツクアワード2018」を受賞した「株式会社リバネス」CTO・井上浄さんに「ミラツクアワード2018記念講演」としてご登壇いただきました。「ミラツクアワード」は、ミラツク・代表の西村が「1年間に会った人のなかから、ぜひたくさんの人に出会ってもらいたい人と取り組み」を選び、贈っている賞です。井上さんが手がける研究のこと、そしてリバネスという会社の思いや取り組みについて、お話いただきました。

(フォーラム撮影:廣川慶明)

登壇者プロフィール
井上浄さん

株式会社リバネス 代表取締役副社長CTO
東京薬科大学大学院薬学研究科博士課程修了。博士(薬学)/薬剤師。大学院在学中に理工系大学生・大学院生のみで「リバネス」を設立。「リバネス」創業メンバーのひとり。博士課程を修了後、北里大学理学部生物科学科助教および講師、京都大学大学院医学研究科助教を経て、2015年より慶應義塾大学先端生命科学研究所特任准教授、2018年より熊本大学薬学部先端薬学教授、慶應義塾大学薬学部客員教授に就任・兼務。研究開発を行いながら、大学・研究機関との共同研究事業の立ち上げや研究所設立の支援などに携わる研究者。ほかに、株式会社ヒューマノーム研究所取締役、株式会社メタジェン技術顧問、株式会社サイディン技術顧問などを兼務。著書に『抗体物語』(共著)、『iPS細胞物語』(共著)などがある。

研究は「世界初の事実を、自分の手で、目の前で証明すること」


井上さん みなさんこんにちは。今日はなんでも好きに話していいということだったので、会社のことだけでなく、普段はあまり話さない研究の話もさせてもらおうと思います。僕は、いろいろなところで「研究だ。研究だ」と言っているので、もしかしたら一部マニアックな方々にはその研究内容を知りたい人もいるかもしれませんので、ちょっとだけですがお話します(笑)。

みなさんはご存知かと思います。かの有名な僕の著書『抗体物語』。知ってますよね? 読みましたか? もうこれ、ヤフーオークションでしか売ってません(笑)。これは、全理系の大学院生に向けた活字の本です。書いてあるのは、抗体に関わる研究のことです。たとえば、なぜインフルエンザのワクチンは毎年受けないといけないのか、アレルギーはなぜ起きるのか、最先端の薬はどこまで進んでいるのか。抗体というのは世界で売れている医薬品のトップ10のなかに6つも入っているんです。そういうことを最先端の研究者にヒアリングしながらつくった本なんですけど、まぁ売れませんでした(笑)。

でも、たとえば漫画だったら読みたいと思いませんか? なので、この本の内容を『新抗体物語』という漫画にしました。「協和発酵キリン」さんのホームページで無料公開していますので、ぜひ「新抗体物語」と検索してみてください。抗体とはそもそもなんなのか、免疫の病気ってなんなのか、そういったことが書いてあります。ワクチンの話もとてもわかりやすいので、免疫や抗体についての導入編として最適です。

ちなみに主人公の牛島元は、なぜか大学時代の僕に顔がそっくりなんですよね。ということでモデルかもしれないので(笑)、よかったら読んでみてください。そして、感想を聞かせてもらえればと思います。

自己紹介の前に本の紹介をしてしまいましたが、改めて自己紹介をさせてもらいます。僕は「株式会社リバネス」でCTOをやっている井上浄といいます。僕自身は、複数の大学で客員教授を務めたり、さまざまな屋号を持っていますが、ことの始まりは仲間と一緒に立ち上げたリバネスというベンチャーです。大学やベンチャー、経産省の委員などなど、いろいろなことをやっていますが、僕がやりたいことはひとつです。それがまさに「研究」です。僕がなぜ研究が好きなのかという話をこれからしていきたいと思います。

僕には、なりたい理想像があります。知っている方もいっぱいいらっしゃると思うんですけど、僕は最終的には『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のエメット・ブラウン博士になりたいんです! だって、自宅のガレージでタイムマシンつくっちゃうなんてむちゃくちゃかっこよくないですか! そこに僕はしびれちゃって、最終的にこうなってやろうと思いました。それで仲間を15人集めて、彼らと一緒にリバネスを立ち上げたわけです。(『バック・トゥ・ザ・フューチャー』でいえば)「お前を未来へ連れていってやる」そんな感じで子供たちの前に立ってますね。

研究を始めた頃に気づいたことがあるんです。研究者は、どんな課題を解決したいのかを考えるとき、いろいろな想像をします。こんな薬があったらいいな、こんな治療法があったらいいな。そう思って、理想的なことをめちゃめちゃ想像します。そして、その理想を実現するために「世界初の事実を、自分の手で、目の前で証明していく」。これこそが研究なんだ、と気づいたんです。というか、おそらくこれ以外、研究じゃないんです。大学に入って研究を重ねるごとに、そこにハマってしまいました。だって、こんなに楽しいことはないじゃないですか。

こういう薬ができたらいいな、それにチャレンジしてる人はいるのかなって想像して、まず論文を検索するんです。論文には少なくとも今、世界最先端で起こっているエビデンスや事実が存在しています。そのなかになければ、それは世界初です。「世界初が自分の目で見られる」ことが僕のドライビングフォースになっている。つまり、僕は世界初の事実をこの目で見るために研究しているんですね。

生体防御システムをうまく使い、薬をつくる

僕の専門は「免疫」です。感染症に対する抗体や、感染症のウイルスから体を守る仕組みを研究しています。みんなの体にすでにあって、普段、僕らの体を外敵が守ってくれている生体防御システムを使って、普段ではつくりだせないような新しい薬をつくろうという試みをやっているのが主な研究になります。

みなさん、免疫細胞っていわれても、「まあ、よく聞くよね」「(ウイルスから体を)守ってくれてるんでしょ」とは思うかもしれないですけど、守ってくれてる姿、見たことありますか? 普通ないですよね。これは、免疫細胞を顕微鏡で見ながらいろいろな仕掛けを入れてつくった映像です。ちょっと見てください。

(映像を見ながら)これは、血液のなかだと思ってください。こっちは好中球という免疫細胞で、こっちがバクテリアです。好中球というのは、いわゆるバクテリアを食べてくれる白血球です。(好中球がバクテリアを)めちゃくちゃ追いかけてるでしょ。まだいく! まだ追いかける!

好中球は血液のなかでいちばん多い白血球です。僕らの体にはたくさんのばい菌が入ってくる可能性がありますが、ああいう仲間(好中球)が血液のなかにたくさんいて、入ってきたばい菌をバクバク食べて消化してくれているんですね。

全身いろんなところにあるリンパ節とか免疫組織には、いろいろな種類の免疫細胞がきゅっと詰まっています。それによって、あらゆる外敵に対応できるように準備しているんですね。一対一の対応に近いぐらいの細胞をもっているうえ、体の中で唯一、遺伝子組み換えが許されているのが免疫細胞です。組み換えることで、いろいろな外敵に対して反応できる仕組みを、僕らの体はすでに備えている。

ワクチンというのは、外敵がきたときに反応するやつをあらかじめ増やしておけば、次にきたときは大丈夫だろう、ということで打つものです。簡単にいうと、免疫システムを(人工的に)つくることですね。

たとえば今、インフルエンザがものすごく流行っています。この会場にも、見えないけどインフルエンザウイルスがたくさんいるかもしれないんです。そのウイルスから身を守るために必要なものがワクチンだったりするわけです。

体にはいろいろな免疫細胞がぎゅっと詰まってる状態なので、たとえばインフルエンザウイルスだけに反応できる免疫細胞のみが伸び伸びといたら、もっと良い反応をするんじゃないかという仮説が出てくるんです。ほら、満員電車よりも空いてる電車の方がパフォーマンス上がりそうでしょ(笑)?

実際に、その仮説を検証するために北大の先生とエボラウイルスに対する抗体をつくってみました。どうやってつくったかというと、エボラウイルスに反応する免疫組織を、ある種の免疫細胞がいないマウスに移して伸び伸びと反応させてみたんです。そしたらですよ、エボラウイルスをしっかり中和する抗体が一発で取れてきて、それを今、薬や検査薬にしようと頑張っているところです。

これはウイルスに限らず、微生物でも癌でもそうです。いろいろなものに対して自分たちの生体防御システムをうまく使い、薬をつくっていこうというのが、大学などで僕がやっている共同研究のひとつです。ああ、今日はこれが話せただけで本当に満足です(笑)。

ないなら、創る

僕が、大学院生のときに「リバネス」を立ち上げたきっかけは、研究にドはまりしたことと、もう一つ、周りの友だちが就活を始めたことでした。僕は実験室で、世界初が目の前で見れる研究をやることしか考えてなかったんですけど、研究職として就職するかどうか、みんながめちゃめちゃ悩んでいたんですね。なるほど、普通は就職しなきゃいけないのかと、そのときに気づきました。

僕はこの研究をどうやったら続けていけるのか、どうやったらこの研究をもっと発展させられるのかを全力で考えていました。だから「就職するか、研究するか」という選択肢を、なぜ急に突きつけられたのかがよくわかりませんでした。だってそれ、両方ともやれる方法を考えるのがいちばん早いじゃないですか。

好きなことを仕事にしてる人って、最強だと思うんです。それって幸せですよね。辛いことがあっても折れる理由がない。だから僕はそこを目指していたんです。それで、自分の好きな研究を思いきりやれる研究所がほしいなと思うようになって、友だちに声をかけて話をしました。そうしたら、同じような仲間がいたんですよ。「おれ、こういうのがやりたい」って言ったら、そいつらなんて言ったと思います? 「…お前も?」って言ったんです(笑)。「じゃあやらない理由ないよね」ってことで、大学院生15人が集まって始まったのが「リバネス」だったんです。

やりたい研究が思いきりできる研究所がほしかったけど、そんな研究所はなかった。じゃあどうするかっていうと、自分たちで始めるわけです。最初はノーテクノロジーで立ち上げました。だって大学院生ですからね。まだ技術なんてないですよ。でもただひとつだけ、僕らには思いだけはありました。

いつも渋谷のドトールで会社をつくる会議をしてたんですけど、こいつらとだったら絶対に何かが起こると思いました。なぜなら、全員がひとつだけ一致してもっていた思いがあったんです。それは「自分の研究がいちばんおもしろいと思っている」こと。僕は免疫が絶対おもしろいと思っていたけど、あるやつは植物ウイルスがいちばんおもしろいと思っている。あるやつは植物につく根粒菌っていう菌がおもしろいと思っていた。そういう連中がたくさん集まって、会社をつくるための会議なのに「いやいや俺の研究のほうがおもしろい」っていう話をずっとしてたんです(笑)。そういう一人ひとりの思いが集まっていたので、これは絶対に何かが起こるなっていうのは、そのときから感じていました。

さすがに、研究の話をずっとしてると先に進まないから、研究は一旦置いておいて、会社を本気でつくろうぜということで、本を買って、みんなで回し読みをして、会社のつくり方を一から勉強しました。

そうやって始まった会社が、もう今、仲間が70人ぐらいに増えました。博士と修士が半々ぐらいっていう、ある意味、超気持ち悪い会社です(笑)。グループも合わせると300人近くはいます。

最初に始めたのは研究ではなく「教育」だった

事業としては、大きく分けて4つのプロジェクトをやっています。「教育」と「人材」と「研究」と「創業」です。いろいろなことをやっているので、どんな会社なんですかと聞かれるとなかなか困るんですけど、「すっげぇ面白い会社です」ということは自信をもって言えます。

僕らが、何をどうやって始めたのかというお話をしたいと思います。最初に始めたのは「教育」です。当時は、子どもたちの理科離れという状況がありました。また、僕たちの先輩方、ポスドク(ポストドクターの略。博士課程を終了し、常勤研究職になる前の非常勤の研究者)と呼ばれる人たちには就職先がありませんでした。この先どうなるんだという漠然とした不安があるなか、僕らがもっている「俺の研究がいちばんおもしろい」という思いで何ができるのかを考えました。

僕らは、思いっきり好きな研究ができる研究所が持ちたかったんだよね。じゃあ、その研究所は何年後ぐらいにできていたらいい? 10年あれば少なくとも研究所のひとつやふたつはできてると思う。じゃあその10年後に、誰と研究する? 僕は、10年後に僕の研究をおもしろいと思ってくれる今の自分たちと同じ23、4歳の子たち −−つまり当時の中学生や高校生ですね−− と一緒に研究がしたい。じゃあ、彼らのところに俺の研究がいちばんおもしろいという話をしにいこう。そうしたら、10年後に仲間になってくれるかもしれない。

ということで、僕らはまず、実験教室を始めたんです。教育っていうのは、僕の観点からいけば、永遠に未来の仲間をつくるためのものです。自分の研究がめちゃくちゃおもしろい、それはこういうことなんだよっていうことを、簡単な実験を織り交ぜながら説明する。たとえばDNAって普通は見たことないじゃないですか。でも、ブロッコリーをゴリゴリやると見えるんですよね。触ることもできる。そういうものを駆使しながら、仲間を増やしていったというのが「出前実験教室」でした。リバネスを立ち上げた15人全員、考え方は違っていたと思うんですけど、僕はそれで理科離れが解決したらいいなと思いましたし、ポスドク問題が解決できたらいいなとも思っていました。

すごく嬉しかったのが、以前僕らの実験教室を受けて、文系だったのに理転して、大学院に進んで修士まで取って、リバネスに入社してきた子が実際にいるんです。だから僕らは、本当に彼らと一緒に研究ができるようになっているんですよね。

実験教室でいちばん成長したのは、自分たちだった

でね、実験教室から始めたじゃないですか。そのときに気づいたことがあったんですよ。僕らがおもしろい話をすると、子どもたちの目は確かに輝きます。でもそこで何が起きたかっていうと、いちばん成長していたのは自分たち自身だったということに気づいたんです。なぜかというと、子どもたちを笑わせたり、目を輝かせるために、すごくわかりにくい研究をどうやって説明したらいいか、めちゃめちゃ頑張って勉強して、伝える練習を仲間たちとさんざんやったんです。

大学院にいたときに、細胞内シグナル・伝達というテーマを渡されて、細胞のなかの化学的な反応地図を描く研究をしていました。じゃあ、子どもたちの前に出て、こうやって地図を描くんだよーっていう話をしたとします。そのときに「それって何の意味があるんですか?」っていう質問をされたとしたら、めちゃめちゃ勉強してないとパッと答えられないんです。「きょ、教授に渡されたテーマだから…」とか言えないでしょ(笑)。だから僕らは、その背景にあるものを子どもたちに伝えるために、一生懸命学びました。類似の研究も学びました。それが発展したらどういうことになるのかということも学びました。しかも、それをわかりやすく伝えようとめちゃくちゃ努力しなくちゃいけません。その結果、じつは自分たちがいちばん成長していたというわけなんです。

じゃあこの仕組み自体が、もしかしたら人材育成モデルに応用できるんじゃないかということで、人材育成プロジェクトをスタートさせました。企業でも、実験教室のように新入社員や1、2年目の若い社員に向けて、各専門の人に会社の技術を伝えてもらう。各専門の人が独自のスキル、会社の技術を一生懸命学んで伝え、仲間づくりをしていきましょうというものを、研修として提供しているんですね。

研究所も9つつくることができました。集まっているメンバーは、みんな専門分野がバラバラです。でも研究で新しいことが起こる瞬間って、ある分野の尖った人と、全然関係ないある分野の尖った人がつながって、何かが始まるときなんですね。まさにリバネスがそうなのですが、じゃあそういう場をもっと広くつくろうということで始めたのが、異分野が集まる「超異分野学会」です。ここには中学生も高校生も、町工場の匠も、大企業の研究者もきます。何かおもしろいことやってやろうと集まってくるんですね。

(超異分野学会の動画はこちら)

「超異分野学会」は、どんどん物事が起こる場にしていきたくて、今、ブーストをかけて大きくしようと思っています。みなさんも参加したいと思いませんか? ぜひ発表していただいて、新しいことと思いきりぶつかっていただいて、何か起こしてください。で、起こすときは呼んでください。

サイエンスキャッスル」というものもあります。じつは今日、東京と大阪でやってるんですけど、これは中高生の学会です。地域の課題や自分たちの課題を思いきり研究してる子どもたちって、全国にたくさんいるんですね。それを発表する場がなかったので、全国4箇所で開催して、発表してもらっています。

(サイエンスキャッスルの動画はこちら)

熱意ある研究者をサポートする仕組み「テックプランター」

こんなふうに、リバネスは研究者が集まってできたベンチャーなんですけど、最初はテクノロジーで立ち上がったわけじゃなかったんです。でもその熱意が集まって、16年間運営することで、広範なノウハウを蓄積してきました。そしてこの場を、技術をもっている大学の先生方、何か課題を解決していきたい個人、そういった人たちのために使えるんじゃないかと思うようになって、創業プラットフォーム「テックプランター」を立ち上げました。

熱意をもって新しいものをつくっているのは社内だけじゃなくて、僕らの仲間たち、愛すべき研究者たち、一人ひとりがものすごい熱量をもっている。だから、もしかすると常に熱量をもってやってきた僕らなら、研究者で技術やテクノロジーをもった人たちをサポートできるんじゃないかと考えました。そして、研究から新しい事業を生み出すということを徹底的に進めているのが「テックプランター」になります。

「テックプランター」は、ディープテック、バイオテック、アグリテック、マリンテックの4部門でやっています。海に関するテクノロジーをやっているのはうちぐらいじゃないかと思いますね。そして、ついにきました! 満を持して、2019年2月2日、メドテックが始まります。医療、創薬などのプロジェクトを全国で集めますので、興味のある方はお声がけください。

これは、よくあるビジネスプランコンテストとはまったく違います。僕らがやりたいのは、ビジネスプランコンテストじゃない、その物事が起こるために必要なことを、一年間かけてずっと一緒に回していくということです。研究者のプレゼンテーションから、会社のプレゼンテーションにしていく。人の心を動かすプレゼンテーションを一緒につくる。「その技術なら、この先生と組んだらもっと面白いことになるかもしれませんよ」とか、僕らの知識プラットフォームを使って、どんどん進化させていく。一緒に研究して、一緒に事業にしていく。そういうことができるようになるというのが「テックプランター」の仕組みです。これは日本で唯一の取り組みかもわからないですね。

僕らは科学技術の発展と地球貢献を実現するためにリバネスをやっています。なので「仕事じゃなくて地球貢献をやっています」っていうことを言い続けています。そして、愛すべき研究者たちと世界を変えるために、人類を進化させるために、このテックプランターを始めました。そういうところで、似たようなビジネスプランコンテストと根本が違うということはあると思います。

誰かが「絶対にやる」と言ったものの中から、物事は起こる

僕らには仮説があります。物事が起きるときというのは、最終的には誰かが「絶対にやる」と言ったからできているということです。逆にいうと、誰かが「絶対にやる」と言ったもののなかから、物事は大きく起こります。世界を変えるんだったら、誰かが熱を持っていないと絶対にできない。この仮説をもって、リバネスでは「お前の熱はなんだ?」「お前のクエスチョンはなんだ?」「お前のパッションはどこだ?」みたいな問いが毎日会社のなかで飛び交っています。だからうちの会社にくると面倒くさいですよ。「で、あなたのパッションはなんですか?」みたいに普通に聞いてくるので(笑)。それが結果として、こういうベンチャーを立ち上げるに至りました。

だから、「リバネス」にどういう人間が集まっているかというと、それぞれが、最初にとにかくやりたいことをもってくるんです。「リバネスにいきたい」って言われたら「とりあえず全体会議で何をやりたいか話してみて」って言って、プレゼンしてもらう。「おお、いいね!」ってなると、入社です。おめでとうございますっていう感じで仲間ができます。もちろん一応手続きはありますけど(笑)、簡単にいうとそんな感じです。なので、リバネスは全員にやりたいことがあるんですね。教育を変えたいとか、こういう研究がやりたいとか、科学技術のおもしろさを伝えたいとか。この一つひとつが、僕らのプロジェクトになっていきます。

仕事というのは仕掛けてなんぼ、やってなんぼです。そもそも研究者というのは新しいことをやっていない限り、価値がないです。誰かの真似をやっている人は研究者ではありません。なので、言い方を変えれば「物事を仕掛ける」というのが僕らの仕事です。

で、僕らが支援しているベンチャーにも覚悟を決めて仕掛けている人たちがたくさんいます。たとえば細胞を培養して、肉を模して純肉:ピュアミート(培養肉)をつくっている人たちがいて、すでに資金調達もしてガンガン進めています。

今日は「Ryukyufrogs」の比屋根さん(ミラツクアワード2017受賞者)もきてくださっているんですけど、以前にお話を聞いて、まったくそのとおりだなと思ったことがありました。それは「人生やるかやらないかだ」ということです。やらない理由なんて100以上ある。いいわけを始めたら、そんなものいくらでも出てくるでしょう。つまりシンプルに「やるかやらないか」だけ。だから「よし、やろう」っていう、それだけでいいんじゃないかなと思います。やらされるんじゃなくて、やる。それは僕自身もそうだし、「リバネス」もそうだし、テックプランターに出てくるチームもそうなんです。

なので、とにかくいいわけはやめようと。だってやりたいことあるんだよね。やりたいことあるんだったらやれる方法を考えましょうと。これは研究者だけでなく、みなさんが事業を始めるときもそうだと思います。やりたいことがあったら、どうやったらこれができるのか、それを真剣に考えるというのが、僕が常にやっていることです。

「未来を知る」を超えて、僕らは「未来を創る」

で、もう一回『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の話に戻るんですけど、彼、知ってます? ビフ(・タネン)です。

ビフは、未来のビフからスポーツ年鑑みたいなのをもらって、明日行われるフットボールとか野球の試合でどっちが勝つかがわかる状態をつくって賭けをやるんです。それで、どんどんお金を儲けて不動産王になります。ビフのモデルになっているのはトランプ大統領ですね。

『バック・トゥ・ザ・フューチャー』では「お前を未来に連れてってやる」っていう言葉が出てくるんですけど、僕はこの言葉も結構好きです。悪人目線ですけど、超シンプルに言いたいこと言ってるんですよ。これです。

本当にそれだけ。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』では、未来を知れば勝てるからタイムマシンつくりますかという話になるんですけど、僕らはそうではないんですね。リバネスを立ち上げたときにメンバーと話してたのは、10年後にマジで何か起きるかもしれない、ということでした。今、そのときに話していたことが徐々に現実になってきています。それでまた僕らは20年後、30年後、144年後を見ています。そこで何が起きるのかを本当に考えているんです。

でもそれぐらいになってくると、もう「未来を知る」とかじゃないんです。…「創る」んです。実際に10年かけてつくることができたので、20年後も30年後も絶対につくれると思うんですね。

じゃあ、お前は未来に向けて今、何を仕掛けているんだというのを最後に紹介したいと思いましたが、もう時間がないので、興味のある方は調べてみてください。「ヒューマノームラボ」で出てきます。このへんで終わりにするんですが、僕はこの先、みなさんと一緒に新しいことを仕掛けるっていうことをやりたいです。合言葉は「さあ!研究だ!」。

僕らは間違いなく、やります。

ということで、ご清聴どうもありがとうございました。

平川友紀 ライター
リアリティを残し、行間を拾う、ストーリーライター・文筆家。greenz.jpシニアライター。1979年生まれ。20代前半を音楽インディーズ雑誌の編集長として過ごし、生き方や表現について多くのミュージシャンから影響を受けた。2006年、神奈川県の里山のまち、旧藤野町(相模原市緑区)に移住。その多様性のあるコミュニティにすっかり魅了され、気づけばまちづくり、暮らし、教育などを主なテーマに執筆中。
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